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SIG活動 SIG Activities

サービス・ケイパビリティSIG

  • 委員長: 原 良憲 (京都大学)
  • 副委員長: 西野 成昭 (東京大学),生稲 史彦 (筑波大学)
  • キーワード: サービス,フレームワーク,マッチング,資源制約,塩梅,アルゴリズム

1. SIG設立の主旨

一般に,サービス学の対象は広範かつ複雑であり,観察も制御も行いにくい.サービス・ドミナント・ロジック (Vargo et al. 2004) など価値創出の考え方の指針を示す概念は提案されているが,サービスの設計指針,最適化を目指すためのフレームワークとはなっていない.本研究会では,新たなフレームワークの中心概念として「サービス・ケイパビリティ」を打ち出し,研究を進める.経営学で議論されているケイパビリティ(組織能力)の考え方を軸に,サービス理解や最適化などへの展開を指向するものである.

経営学のケイパビリティ概念の背景には,経営資源を中心に企業を考えるアプローチ (RBV: Resource-Based View) がある.RBVはPenroseなどの先駆的な業績を受けて1980年代半ばに本格的に台頭し,企業の競争優位の源泉を説明する代表的な枠組みとなった (Barney, 1997など).RBVでは企業が保有するヒト,モノ,カネ,情報という資源,それらを活用する力としてのケイパビリティに焦点を当てる.企業によって異なる経営資源とケイパビリティが,実現できる企業行動の違いを生み,結果として,利益などの企業の成果が異なると考える.

ここで,ケイパビリティの内容は組織全体が持つ行動や知識の体系である.行動も知識も,過去の経営行動に根ざしている (経路依存的).それもあって,競合他社は模倣しにくい (模倣困難性).したがって,独自のケイパビリティを構築すれば,比較的長い期間,他社との差をつくり,利益を獲得するための源泉にできる.

本研究会では,サービス・ケイパビリティを「利害関係者や資源の制約を解決し,うまく結びつけ活用する能力」であると定義する.サービス経営資源の活用に関する,このような能力を規定すると,まさにサービス・ケイパビリティの優劣が,サービス価値の創出や生産性に影響を与えているといえる.また,個々の組織がもつサービス・ケイパビリティは,上述の意味で,経路依存的であり,かつ,模倣困難性があると考えられる.それゆえ,サービスを提供する企業や組織,もしくは現場が,過去の活動を通じて地道に独自のサービス・ケイパビリティという能力を構築することこそが重要であり,よいサービスを生む源泉になるという見通しが立つ.

こうしたサービス・ケイパビリティは,本来,サービスの全てのプロセスで働く.ただし,一つの重要な局面は個性をもつ利害関係者や,独自性のある資源を上手く結びつけることである.例えば,メカニズムデザイン分野で研究されている学生と学校のマッチング問題のように,サービス提供の早い段階で利害関係者や資源を適切に組み合わせる方法が分かれば,その後のサービス提供はスムーズに進み,最終的な成果を高めやすくなる.換言すれば,ミスマッチを防ぎ,不必要な労力を避け,利害関係者が正しく努力できるようにすることが,サービス・ケイパビリティの重要な要素である.そのように考えれば,マッチングに関する理論が,サービス・ケイパビリティのフレームワーク構築としての重要な出発点となり得る.


2. 研究実施項目

以上を背景に,本研究会では「サービス学フレームとしてのサービス・ケイパビリティの研究と実践」を目的として掲げ,具体的には以下の項目を実施する.

  1. サービス学として,マッチングなど再現可能な共通フレームワークの構築
  2. 多様なサービスを応用レイヤー,インターフェース,アルゴリズムレイヤーと分けた整理手法
  3. サービスプロセスの最適化とサービスモデルの水平展開(サービス多角化,範囲の経済)の実施
  4. 共通フレームワーク構築のためのコンペティションの実施,事例・アルゴリズムの蓄積,精緻化等

このように,サービスをマッチング問題として捉えるなど,見通しの良い考え方(フレームワーク)を導入することにより,共通的な研究・実践の可能性が開けると期待される.いわば,資源の制約や利害関係のある複雑なサービスを扱う際に,よい設計指針,よい塩梅(バランス)の指針を与えることに相当する.

本研究会は,サービス学フレームワークとしてのサービス・ケイパビリティに関する理論と実践を行っていくことを目的として設定する.また,アカデミアと実務家の両者を含めたサービス学会関係者が取り組むべき課題として活動を遂行し,サービス・ケイパビリティについて徹底的に議論し,実践的なアウトプットを目指す.


3. SIGへの参加方法

参加希望の方は下記URLから申し込み下さい.なお,希望参加SIG名で「サービス・ケイパビリティ」を選択してください.サービス学会会員以外の方でも参加できます.
http://ja.serviceology.org/introduction/sig_participation.html


2016年度第2回研究会開催のお知らせ

  • 日時: 2017年1月30日(月) 15:00-17:00
  • 場所: 東京大学 工学部3号館2階321号室(ラウンジ講義室)
    http://www.u-tokyo.ac.jp/campusmap/cam01_04_04_j.html
  • プログラム:
    • 15:00-15:05 開会挨拶
      原 良憲(京都大学 経営管理大学院 教授)
    • 15:05-15:35 講演1「マッチングビジネスにおける経営資源の利用の最適化」
      海野 大氏(NTT コミュニケーションズ 株式会社)
      講演概要:本講演では,社会的価値を最大化する最適マッチングの実現に対して仲介者の行動が与える影響を考察する.マッチング問題に関する先行研究を概観し,シェアリングエコノミーにおける資源と利用者のマッチングモデルを定式化する.また,数値シミュレーションにより解を求め,その結果を考察する.シミュレーションの結果,仲介者の収入最大化行動が マッチングの社会的価値を減少させる恐れのあることが示唆された.
    • 15:35-16:05 講演2「認知症改善・予防サービスにおけるサービス・ケイパビリティに関する考察」
      惣宇利 紀子氏 (株式会社 公文教育研究会)
      講演概要:公文教育研究会では、高齢者の認知機能や身辺自立機能などの維持・改善をはかるサービスを開始し、現在、日本では、 20,000人近くの方が利用されている。しかし一方で、労働集約型の形態のままではコストもかかり、施設での人材不足と増加する入所者、また介護保険制度の構造的な側面も含めて、ビジネスとして成立しにくい課題がある。我々は、サービス・ケイパビリティの考え方を援用し、 社会的課題解決と持続可能なビジネスとを両立させるシステムの要因分析、並びにその実現に向けた提案を行う。
    • 16:05-16:35 講演3「システムとしての医療サービスの抱える課題」
      堤 崇士氏 (株式会社グロービス)
      講演概要:医療サービスは患者を中心として、様々なステークホルダーが絡む複雑なシステムである.医療サービスにまつわる様々な問題を個別事象としてではなく,システムとして捉えた際に,どのように課題が整理されるかを把握する.最適な医療制度を構築するには,「質の高い医療をできるだけ最小のコストで国民誰もが公平に受けられるようにすること」が目標となる.この目標を達成していくためには、医療サービスの問題をここで列挙するのではなく,システム全体の中でどう位置づけられるかをまず明らかにすべきである.
    • 16:35-17:00 サービス・ケイパビリティ研究のフレームワーク全体討論
  • 参加申し込み
    第2回研究会に参加を希望される場合は、下記から申し込みをお願いします。
    申し込みページ
  • 参問い合わせ先
    sig-capability-admin@serviceology.org

2016年度第1回研究会開催のお知らせ

  • 日時: 2016年10月3日(月) 16:30-18:30
  • 場所: 京都大学 吉田キャンパス 法経東館みずほホール (地図)
  • プログラム:
    • 16:30-16:40 開会挨拶、SIGの活動予定など
      原 良憲(京都大学 経営管理大学院 教授)
    • 16:40-17:20 講演1「サービス・ケイパビリティ観点に基づく持続可能な医療制度構築のための課題整理」
      堤 崇士氏(株式会社グロービス)
      講演概要:2025年には団塊の世代が後期高齢者となり、75歳以上が全人口の18%を占める高齢社会が到来する。現在の医療制度はこの高齢社会のために主に財政面において持続可能な取り組みを試みている。しかし、医療システムは、支払い者とサービス需要者が異なっていたり、質の定義が難しいなどいくつかの特殊事情がある。これらの特殊事情を患者、医療従事者、保険者という3者のステークホルダーにおけるサービス・ケイパビリティ観点から整理し、持続可能な医療制度構築に向けてどのような課題があるのかにつき言及する。
    • 17:20-18:00 講演2「医療業界におけるマッチングサービスの事業展開」
      塩飽 哲生氏(リーズンホワイ株式会社 代表取締役)
    • 18:00-18:30 サービス・ケイパビリティ研究のフレームワーク全体討論

 

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