戸谷 圭子(明治大学)
このたび、サービス学会6代目の会長を拝命した戸谷です。サービス学会は今回、学会員による直接選挙による会長選出を取り入れました。私は選挙によって選出された初代会長ということになります。2011年の学会設立から、社会科学と自然科学、実務の研究者が交差し、研究方法論の違いや用語の違いなど、多くの困難に直面しながらも本学会は緩やかに成長してきました。 この間、政治・経済・社会・技術の環境要因、ひいては、社会構造や人々の価値観も変わる中、一つの学問領域では扱えない課題が次々と発生しています。このVUCAの時代、本学会が設立当初より目指してきた、産学・文理協力のもと行うサービス研究の意義と責務は高まっています。私は会長就任にあたり、以下の2点に力を注ぎたいと思います。
サービスは経済の主要活動であるとともに、生活の質(Quality of Life)の向上、地域社会の繁栄、ひいては地球規模問題の解決の基底となる重要な要素である。グローバル化する市場においては、製品やサービスの経済学的価値を高めることが求められる一方、サービスを利用する個々の生活者にとっての価値(生活価値)を高めることが重要である。また、エネルギーや環境をはじめとする地球規模の問題の解決や社会価値の創出に向けては、サービスに関わるステークホルダ間の共創的意思決定を促す制度設計も求められる。
従来、サービスの関連研究は、経営学やマーケティング、情報工学や設計工学といった個別の研究分野で発展してきた。しかしながら、社会においてより良いサービスを実現するためには、社会科学、人間科学、理工学の協調が必要であるとともに、産業界と学術界との強い連携が不可欠である。そこでは、社会および経済のサービスに関わる活動、すなわち、狭義のサービス業のみならず、製造業等におけるサービス化も含めた包括的なサービスに対する学術的理解を確立し、顧客と共に高い顧客満足度を共創する体系の展開が必要である。
サービスはグローバルに展開されている一方で、その国の文化や社会的背景に強く影響される。今般、本学会は日本発で設立するが、世界規模で展開する予定である。すなわち、本学会は各国文化を尊重しつつ、世界に開かれた学会であることを志向する。
本学会は、サービスに関する広範な知識を体系化することで、様々な産業課題の解決に寄与し、よって、サービスに関わる「社会のための学術」を構築することを目的とする。この目的のために、和文名ではサービス学を、英文名には「学」を意味する -ology を採用し、社会科学、人間科学、理工学を問わず、サービスに携わる様々な分野の研究者が交流し、互いを尊重し、切磋琢磨できる新たなコミュニティの育成を先導する。
2012年10月1日
サービス学会 設立準備会 世話人
新井 民夫(芝浦工業大学)
伊藤 元重(東京大学)
持丸 正明(産業技術総合研究所)
淺間 一(東京大学)
秋草 直之(サービス産業生産性協議会代表幹事)