このセッションは、私が研究代表を務めさせて頂いた、JSPS科学研究費補助金、基盤研究A、平成27年度採択課題「高齢者、介護スタッフの思いを記録し記憶へと繋ぐシステム」の最終報告会ということで、研究分担者の先生方他に成果を発表して頂くために企画いたしました。私は10年以上、高齢認知症者を情報通信技術で支援する研究に従事していました。そして介護施設であるグループホームに入居直前、直後の認知症高齢者(本人)を取り巻く悲劇的な状況を見てきました。家族は介護で疲弊し無関心となり、非日常的空間へ無理やり押し込まれた本人は介護スタッフとの関係性を構築できず孤立無援となることがしばしばです。そこで私は、介護施設が本人の安らぎの空間になるよう、心地よい記憶を形成する補助が可能なシステムを研究開発したいと考えました。認知症者は短期記憶を残すことは困難だが感情の記憶は残ります。過去の記憶だけでなく現在の生活での様々なバーバル、ノンバーバル情報を記録し断片を紡ぎ、本人が幸せを感じる記憶の形成を補助するのです。これら記録は支える側が本人の記憶のエビデンスとして共有することもできます。これによって本人のQOL向上、介護負担感の軽減を実現したいと考えたのです。